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2024.04.23 :その他,外出

桜の次の季節

桜が散り、新緑で覆われる時期がくると、Nさんのことをよく思い出します。

車椅子を足で操作しながら正面玄関のゆるい傾斜を下り

事務室にいる私を横目に、自動ドアから外へ出かけるNさん。

『散歩ですか?』と聞くと

『そうだよ』と答えてくれます。

『一人では危ないので一緒に行きましょう』

玄関の目の前にある川沿いの桜並木を散歩するのが、いつものコースでした。

戦争の話、昔の街並みの話、妹の話、金の鯉より黒い鯉のほうが美味しい話、遠泳の話、

桜の毛虫の話、5年5月5日の生まれの話。

散歩に出るたびに、いつも同じ話の繰り返しでしたが、とても楽しい時間でした。

ただ、退職するその日まで私の名前は『あけみ』のままでした。

 

深く学んでいないことは簡単に忘れてしまう。

深く学んだ記憶であっても、時間と共に劣化する。

劣化を防ぐためには、記憶を後から使用したり思い出したりする必要がある。

 

新しい記憶を追加すると古い記憶が無くなるように思いますが

余程どうでもよい記憶以外は、しっかりと頭の中の引き出しには存在しているそうです。

『知らない』『聞いてない』『わからない』と簡単に諦める前に時々思い出してみる、

記録に残す、誰かと共有する、自分で調べてみるという努力が必要なのではないのかなと思うことがあります。

記憶するときも、何故それが必要なのか、これはまた必要になるときがあるのかを考えながら

深い記憶として残す技術も。

 

あとは、DHAのサプリですかね。

 

別邸暁 季の庭 しだれ桜